時がたち…A

のり



          
いまの俺は蘭を幸せにしてやる事ができるかなんて解からない。

けれど、もう2度と蘭を失いたくないんだ……。






俺は蘭のもとへと走った。早くアイツに伝えたい。

今までのこと、俺の気持ちを。









「はぁ……はぁ……、ったくアイツらどこに飲みにいったんだぁ?」 
俺はとりあえず、駅前に最近できた居酒屋に行ってみた。

そこには和葉と園子の姿が。

「なぁ、蘭しらねえか?」

「あっ、蘭なら新一君の家に行ったわよ、ついさっき。」
「そうやそうや、工藤君に会えるっちゅったら、はりきって走っていきよったで。」

俺の家?ったく、服部のヤツ場所も教えろっつーの…。 

「そっか、サンキュー。」

居酒屋をでて、また走り出した。

もう少しだ、蘭にホントの事を伝えられるんだ…!

俺のあしどりは軽くなった。




「ねぇ、今のって工藤くんやのうてコナン君やったよねぇ?」
「あぁ、蘭を新一君に取られると思って心配してんじゃないの?あの子蘭に惚れてたみたいだし。」
  





もう前みたいな迷いなんてない。ただ、今の気持ちを蘭に伝えたい。


蘭はどんな反応するかな? 

驚く?怒る?悲しむ?




そんなことはどうでもいいんだ。






ただ、お前をしっかりと捕まえたい。

2度とはなさないように…。







「はぁ、はぁ……。蘭……?」

玄関の前に人影が。それは蘭だった。






さあ伝えよう。この思いを。












やっと新一が帰ってくるんだ!あの日言えなかったことを伝えよう。




あたしは、新一以外愛せないの…




あたしをしっかり捕まえていて…!!







あたしは新一の家にきた。といっても、今はコナン君が住んでいるんだけど。


なつかしい…。結婚してからは来てないもんなぁ。


そんなことを思いながら、あたしは門の前にこしを下ろした。





「はやくこないかなぁ…。新一…。」









「蘭………!」

確かに新一の声。けれど少し幼い感じの…。



振り返ってみると、そこにはコナン君が。

なんだか息がきれてる。ここまで走ってきたみたい。




「コ…コナン君っ…どうしたのこんなところで。」

あ〜あ、あたしまたすっぽかされた?

やっぱり帰ってくる気なんてないのかな…?









「蘭、ゴメンなずっと待たせて。嘘ついて、ごまかして、ホントのこと言えなくて…。

お前にツライ思いばっかさせちまって…」




びっくりした。いつもより低くて、大人びた声。


まるで、ホントに新一みたいな…。





「もういいわよ、コナン君。どうせアイツ帰ってくる気ないんでしょ?


今の言葉だって、あたしに伝えてって、頼まれただけなんでしょ?」






せっかく会って、思いを伝えられるって思ったのに…







なんだかよく解からないけど、涙がポロポロ出てきた。







グイッッッ…!!




ふいにコナン君に腕をつかまれ、あたしの体はすっぽりコナン君の腕の中へ。


懐かしい新一の匂い……。落ち着く……。



「蘭、全部話すよ。今までのことを…。」

あたしを抱きしめるコナン君の腕に力がはいった。



「ホントのコト……?」












「ら、蘭……!!」
どうやら蘭は驚いている。しょうがねぇか、目の前にいるのが新一じゃなくて、俺なんだから。





「蘭、ゴメンなずっと待たせて。嘘ついて、ごまかして、ホントのこと言えなくて…。

お前にツライ思いばっかさせちまって…」

俺は、蘭に話し始めた。だが、





「もういいわよ、コナン君。どうせアイツ帰ってくる気ないんでしょ?」

と言って蘭は泣き出してしまった。


俺は最後の最後まで、蘭を泣かせちまったなぁ…




けれど、



もう、迷わねぇ…!!





グイッッ……!


俺は蘭を抱き寄せた。体が小さくなる前はこんなこと出来なかった。でも今なら…



「蘭、全部話すよ。今までのことを…。」

蘭を抱く腕に力をこめ、俺は話し始めた。

今までのこと。なにもかも、全部。
















「……だから、蘭を危険なめに合わせたくなかったから、どうしても言えなかったんだ…。

ホントにすまねぇな…。ツライ思いばっかさせちまって…。」




蘭は黙ったままだ。が、突然…


「バカバカバカバカバカ…!!!!!!」

「なんで言ってくれなかったの?あんたがあの日あんなこというから……

俺のこと忘れろなんて言ったから、結婚しちゃったじゃないの…!!」




蘭は、下を向いたままそういった。好きな女にこんな思いをさせ

て、俺はどこまで馬鹿なんだ?





「確かにあの時はそう思ったんだ…俺の帰りを待って泣いている
お前をこれ以上見たくなかった…

でもやっぱりダメなんだ。





俺は蘭以外いらねぇ。蘭以外愛せない…


そう思ったんだ…!!」


自然と腕に力が入った。もうはなさねぇ…!!




「あたしね、新一に俺のこと忘れろって言われて、ホントに忘れようとしたんだよ?好きでもない人と結婚して、頑張ってその人を好きになろうとしたんだよ…。」



「…あぁ、知ってるよ。」

胸が苦しい。俺以上に蘭は苦しかったんだ。




「でもね、無理だった…新一を忘れるなんて…。

新一以外の人を好きになるなんて…。


あたしは新一以外愛せない……!!」



蘭は俺の背中に手をまわして抱きしめた。

「もう2度とはなさないでよ…?」

震える声で確かめる蘭。




「あぁ、なにがあってもお前をはなさない…」


俺はそう誓った。