初恋日和

                                






          

パタパタと 乾いた地面を蹴って進む軽快な足音が近づくとともに
駆けてくる人物の姿が見えてきた


朝日を背に受け、一瞬目がくらむ



「おっはよ〜!リョーマ様っ」


「・・・ハヨ」


眠たそうな目をこすりながら
面倒そうな声色で返事をする



思わず 視線を移すフリをしつつ
まだ少し肩で息をついている相手のその息遣いに
上昇する体温を感じて
ちらりと盗み見るように相手の出方を探る



・・・どうせ意味なんて無いんだろうけど



「ねえねえ リョーマ様! 今度の日曜、この映画見に行かない?」


おもむろに鞄からチケットを二枚取り出し、目の前に差し出される

反射的にその動きを目で追うようにしていた俺は
少し面食らったように一度瞬きしてから
なるべく興味なさそうに ふーん、と小さく相槌を打ち、チケットに目を落とす
丁度今話題になっている作品で、思わず書かれている文字に軽く目を通す



「わざわざ・・・買ったの?小坂田」


なんとなく相手の顔に視線を投げかけながら口調を変えずに問いかける
・・・わざわざ名前を呼ぶことに、意味なんて無い



「え?えへへ・・・だってリョーマ様と観たかったから」


少し目を伏せて視線をはずし
薄く照れ笑いをこぼしながら
惜しげもなく素直な台詞を投げてくる
その表情に目を奪われながらもそっけなく 答える


「・・・日曜、部活だから・・・」


困ったような微笑を浮かべているが がっかりしているのがわかる

こんなに一生懸命だから
こっちだって、観られないように隠すの必死だけど
ほら、こんなに申し訳なさそうなちょっと頬を染めた情けない顔



「そっか・・・じゃあ しょうがないね またね、リョーマ様!」


いつもの調子の明るい声で言い放ち
くるりと背を向け、立ち去ろうとする
気まずそうにそちらを見ずに頷いたけれど
・・・なーんか、調子狂う

このままなんて、きっとつまらない



「・・・小坂田」


低い声で 無意識に名前を呼んで
教室を出ようとしているところを呼び止めた

ほどなくして、不思議そうにきょとんとした表情で振り返る気配がし、
仏頂面でそちらに目を向ける


「・・・来週なら、空いてるけど?」


感情を抑えて、愛想なく告げる

少しの間、言葉の意味を探すようにぽかんとしていたけれど
すぐにぱっと柔らかい笑顔を見せる


「・・・っ!じゃあっ来週!10時に駅でね!リョーマ様」


「・・・・うん」


一方的に簡潔な約束を取り付けると、
予鈴が鳴ると同時に踵を返してぱたぱたと廊下を駆け出す
きゃー、と嬉しそうな歓声が遠くで聞こえた気がした

快い相手のペースに巻き込まれる。
悪くない

やれやれ、と小さくため息をつくと
自分の鼓動を感じて驚く

目がくらんだのは朝日のせいじゃない











あとがき
初テニプリ小説がこんなのですみません!><
一応初々しさを目指して(爆。。。リョ朋でした。
これ、きっと続きます。
よろしかったら次回も読んでやってください
読んでくださり有難うございました。
BBSにでも感想下さると泣いて喜びます(本気。