所有物宣言
イヨ
「里見くんっ」
「はい?」
突然のように、名を呼ばれ
思わず、声がした方を振り返る
そこには、見たこともない女子生徒が立っていた
聞き間違いかな、とも思ったけど
彼女は確かに、オレの方を見ていて
戸惑うオレの前に、一枚の紙切れが差し出された
「えっ?」
思わず、相手を見る
が、彼女は慌てて
「あっ・・・それ、呼んで下さい!それじゃぁっ!!
」
「えっ?あっ・・・ちょっと!待って!!」
しかし、オレの叫びも空しく
彼女は、とにかくものスゴいスピードで
オレの前から走り去っていってしまった
・ ・ ・ ・ ・ ・
・
・ ・ ・ ・
ふと先刻、渡された一片の紙切れを見やると
知らず、溜め息が漏れでた
それは、この中身が何なのか、
経験的に、悟っているということで
・・・どうしたものか
顔すらも、覚えられなかった
「・・・里見、さん?」
「えっ?」
ふと、聞き覚えのある声が聞こえ
条件反射的に、視線を上げる
―――すると、そこには・・・
「・・・どうか、なさったんですか?」
「・・・穂村」
見慣れた、同じ部活の
一つ歳下の後輩―――
「これから部活ですよ。
・・・大丈夫、ですか?」
心配そうに、こちらを見上げてくる
若干、自分よりも視点の高さが低い
しっかりしてて 真面目で 賢くて
優しくて 人一倍、心配性で
自分にとっては、可愛い後輩だった
彼になら、相談できるかも知れない
ふと、そんな風に思えた
少なくとも、クラスメートに話して
冷やかされるのに比べれば、かなり良い選択肢だと思
えた
「・・・あのさ、穂村」
「はい?」
「告白・・・されちゃったんだけど、どうしよう?」
その言葉に、彼は軽く目を見開いた
それに妙な取っ掛かりを感じ、聞いてみる
「・・・何か、変なこと言ったかな、オレ」
「いえ・・・ただ少し、意外だったもので」
「・・・意外?」
オレのその反応に
穂村は少し、苦笑した
この表情は、確か以前にも見たことがある
淋しいような
切ないような
・・・けれど、優しい
そこにあるのは、純粋な優しさ
そういう表情をさせる『何か』がある証拠
だからこそ、彼に
この話をしたかったのかも知れない
「・・・まさか、こんな相談をされるとは、思っても
見ま
せんでしたよ」
「・・・何で?」
「だって・・・もう、答えは決まっているような気が
しま
したから」
――――――・・・
確かに、そうかも知れない
心のどこかで、オレは
「・・・そう、なのかな」
「ところで、その手紙・・・
もう、お読みになられたんですか?」
「ん?」
再度、紙片に目を留める
そういえば、まだ読んでいなかった
「・・・まだ、みたいですね。
どうぞ、お読みになって下さい」
「あ、うん・・・ごめん。」
・ ・ ・ ・ ・ ・
・
・ ・ ・ ・
中身は、予想通りのものだった
嬉しくない・・・といえば、嘘になる
一生懸命なのはわかるし、好意を寄せられて、正直、
悪い
気もしない
けれど、それと同時に空しさも残る
いつだって、そうだった
彼女達が見ているのは、オレであって、オレじゃない
何でも出来て、完璧な人間でしかなくて・・・
「・・・人を好きになるって、どういう気持ちなんだ
ろう
ね」
「・・・さぁ、オレは、誰かを好きになったことは
な
いか
ら わかりませんけど・・・きっと、その人のことを、
それこそ、自分以上に、大切だと想うんでしょうね・
・
・」
「・・・穂村は、」
「えっ?」
「好きな人、いないの?」
その言葉に
一瞬、空気が凍った
「・・・いませんよ」
何処か、突き放すような
これ以上、詮索することを拒むかのような、声音
「・・・何で?」
「・・・オレのことは良いんです。
・・・それより、里見さんは、何でそんなことで悩ん
でい
るんです?」
「・・・オレは、」
はぐらかされたこともあって
少し、言葉に詰まる
けれど、それだけじゃない
「・・・わかんないや」
この気持ちを何と呼ぶべきか
又、何と伝えるべきか
答えは、まだ、出ない
「・・・オレは、」
「?」
「恋したこともないし、ましてや一人の人間が特別に
なっ
たことなんて、
ないからこんなことが言えるのか、わからないです。でも・・
・。」
「穂、村・・・?」
聡そうな瞳に、真っ直ぐと見つめられる
「里見さんのことを、想ってくれている人がいるなら
、
その人と一緒にいることが、本当の幸せだと思います
。
本当は、もうわかってるんじゃないですか?
・・・本当に、里見さんを必要としてくれる人は、誰
なの
か」
「――――――・・・・・・」
*
思わず、見てしまっていたけれど
今更、入りにくい雰囲気になってしまった
穂村先輩と里見さん・・・
何を、話しているんだろう?
以前から、気にはなっていた
仲が良いな、とは、前からずっと思っていた
けれど、何だか少し、辛い
・・・少し、羨ましいのだろうか
こんなこと、本当は思ってはいけないはずなのに・・
・
「・・・あの二人、仲良いねー」
「!?は、羽深先輩!?」
いつの間に、立っていたのだろう
気配がなくて、気付かなかった
しかも、何やら機嫌が悪い
「楽しそうにしちゃってさー・・・
普段、滅多にあんな顔しないのに・・・」
確かに、ほんの一瞬、見えた笑顔は
穂村先輩のものだとは、思えなかった
けれど、そんなこと、あるわけない
まさか、やきもちなんて・・・
「・・・悔しいなぁ。
・・・よし、ここは一つ!」
はっ、と気がつくと
羽深さんが、さも名案を思いついたかのように、ぽん
っと
手を打った
そして、今まで見たこともないような笑顔でふっ、と
笑い
何となく、身の危険を感じ
つい、じりじりと後ずさる
けれど、その度に距離が縮まり―――・・・
やがてそれは、0になる
「つーかさっ♪」
「っうわわわわっ!?」
「「えっ!?」」
思い掛けない、その行動に
里見さんと穂村先輩も、呆気にとられたようにこちら
を見
た
ほんの一瞬、目が合う
・・・気のせいか、その表情が少し、曇って見えた
一瞬にして、空気が凍りついた
「・・・っ羽深、いい加減にしなさい!
山崎だって、困ってるだろ?」
「え〜?そんなことないよねぇ、司v」
「えっ・・・えっと・・・」
ちらっと穂村先輩の方を見ると
傍目にもわかるほど、淋しそうな表情をしていた
見慣れないその表情に、慌てて取り繕おうとしたけど
、間
に合わず
まだ何か、言いたそうにしていたけれど
結局、その言葉が紡がれることはなかった
ところが、次の瞬間―――・・・
ぐいっ
「へっ?」
「ほら、練習始めるよ!
山崎くんも羽深も、ちゃんと練習やろーねぇ!!」
視界が一瞬、暗転したかと思うと
目の前に、里見さんの姿があった
はっ、と我にかえると、
丁度、抱きかかえられているような図になっていた
その様子を見て、羽深さんが
いっそ、清々しい程の笑顔を向けた
そして・・・
「じゃ、僕と穂村はロードワーク行って来るんで、
里見さんたちはお二人でごゆっくり〜♪」
「えっ!?ちょっと・・・羽深っ!?」
いつの間にか話に巻き込まれて、慌てる穂村さんのこ
とな
ど
一向に気にも留めず、羽深さん達は出て行ってしまっ
た
ぱたんっ
乾いた音と共に
ドアが閉められる
・ ・ ・ ・ ・ ・
・
・ ・ ・ ・
静寂に包まれる
どうしよう、と思っていると
控えめな咳が聞こえてきた
「え、えっと・・・」
何だろう
そういえば、彼とまともに話した機会は
まだ、2、3回だったような気がする
そのことに、今更のように気付き、
改めて、この時間は貴重なものだと感じた
けれど、そんな自分の心境など、知りもせず
「・・・ごめんね?」
放たれたのは、予想外の言葉
「え・・・?」
普段からは想像もつかないような
落ち込んだ表情に、戸惑う
だが、彼は尚も話し続ける
*
「何か・・・勝手なんだけどさ」
自分でも驚くほど
さらさらと、言葉が紡がれる
「何か・・・悔しかった。
君と羽深が仲良くしてるの見て・・・」
やっと、わかった
自分が、何を想っていたのか
自分を必要としてくれたのは『彼』だった、というこ
と
単純すぎて
今までずっと、気付けずにいた
「だから!」
どんなに、身勝手とわかっていても、
・・・自分は、選ぶ。
「あんまり、妬かせないでよね!」
手放す気なんて、ない
少なくとも、手が届く今のうちは
誰にも
譲る気なんて、ないから
覚悟してよね?
あとがき
淡海築さんキリリク12200HITの光司でした
妬きもちネタ・・・とのことで、
張り切って書かせていただきました(笑)
今回は、『4人が妬きもちを妬き合う』、ということで
・・・すみません、書いている人間は、非常に楽しか
った
です
この4人なら、誰同士が絡んでも、結構、私は好きみた
い
です(爆弾発言)
・・・節操なしですみません(心から謝罪)
中でも、里見さん妬かせるのが楽しかったです(爆)
あんまり、妬いてくれなさそうなので・・・
しかし、何をまかり間違ったのか、
タイトルがいつになく偉そう
になってしまいました。
・・・いや、でも!本当はもう一つ案があったのです
が、
そっちの方が偉そうなんですよ!(弁解できてない)
・・・すみません、暖かい目で許してやって下さい
ではでは、リクエストありがとうございました!!
☆管理人からのコメント☆
萌え。ああすみません、うっかり大きな本音が(爆)
か・・・かわ・・・っ(悶絶)4人がそれぞれに妬いてます!みっちゃん格好良い!!
それぞれ独占欲の強い感じがいいですね。さり気にほむはぶ・・・!(狂喜)
愛のある作品をありがとうございました!!
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