アサ美 夜遅く。 近くに住んでいる従妹が尋ねてきた。顔に、少しの涙の跡を浮かべて・・・。 「・・・かごめ?」 名前を呼ぶと、彼女はにこり、と少し微笑んだ。 「こんばんは。ごめんね、こんな遅く」 「いや・・・、お入り」 「ううん。ここでいいの」 「入りなさい」 「だから・・・」 「入れ」 「・・・・・・・・・・・・・・・ハイ」 彼女は帰りたがっていたが、ここで帰したら、いけないというような気がして、呼び止めた。 部屋に通してやると、かごめは私の真正面に座った。 最初は他愛の無い世間話をしていたが、「何の用だった?」と私から話を切り出す と、「うん・・・」と伏し目がちに、かごめは話し始めた。 「犬夜叉にね、ふられてきちゃった」 犬夜叉という名に、私は少しばかり反応した。私の心を読み取られていないか、不安 でかごめを見つめた。 幸い、かごめは私の変化に気付きはしなかった。 「ふぅん・・・」 「あ、でもねっ、平気。ふっきれたし・・・」 「・・・そんな顔で言うセリフか?」 ふわり、とかごめは顔を隠した。やはり、泣いていたらしい。 顔を赤らめて「やっぱ り桔梗にはバレちゃうね」と笑った。 「なんかねーっ、アイツ、【今はお前のことを考えられない】だって!いつなら考え てくれるっていうの!?」 「犬夜叉って結構モテるのに、誰にもなびかないのよね」 「あたしのクラスでもさぁ、なずなちゃんとか、犬夜叉狙いの子が多いのよね」 「なに?ちょっと意外でしょ!?でも、結構優しいのよ? さりげなく助けてくれるし ・・・」 くるくると表情豊かに笑う彼女は、気のせいかいつもの彼女ではなかった。 「好きな子いるのかなーっ。う〜ん、想像できないっ」 「あ、でもねでもねっ!珊瑚ちゃんの話によると、彼女いたらしいのよー、犬夜叉っ !」 「どういう人かな。美人?可愛い子?」 「・・・・・・・・・・・・桔梗ぐらいに綺麗な人が彼女なら諦められるんだけど な」 ・・・・・・・・・。 「未練があるのか?」 私の問いに、かごめはきょとん、と目を開いた。 「・・・・・・あはは。何でそう核心を付くかなぁ・・・」 私の声には答えず、かわりに、そばに置いてあったシャーペンをくるくると回す。 シャーペンがことん、と机に置かれたと同時に、嗚咽が聞こえてきた。 「かごめ」 名前を呼んでやると、彼女は一層に肩を震わせた。 「もうね、誰が・・・何が悪いのかわかんない」 「うん」 「あたし、好きだったんだ、・・・犬夜叉のこと。本当に好きだったの・・・」 「わかってるよ」 「悲しい・・・」 「うん・・・」 不謹慎ながら、目の前にいる娘を、可愛いと思ってしまった。 好きな者のために泣ける娘が・・・。 「悲しい」と。「あの人が欲しい」と泣ける娘 がたまらなく可愛かった。 (・・・そして、少し羨ましい・・・) 時間が経って、ようやくかごめも落ち着いてきた。 もとから強い娘だ。あの時帰してしまったら、一人で寂しく泣いていただろう。 こう いう時、改めてこの子の従姉で良かったと思う。・・・頼られて、良かった。 「あたし・・・、こないだ鋼牙くんに告白されたの」 意外な告白だった。 会話中に出てきた男の名は幾らかかごめの話で聞いたことはあっ た。 その男がかごめに好意を寄せているのも話の都合上、知っていたけれど、かごめ が犬夜叉に積極的に近づいていった頃、彼の話は聞かなくなった。 (かごめを諦めたのかと思っていたのに・・・) 「・・・Okはしてないけど・・・。あたし、こわいなぁ。少しずつ・・・鋼牙くんの こと好きになり始めているのかも・・・」 「・・・そうか・・・」 傷をおった人間は、意外と脆く、誰かに甘えたい。誰かに頼っていきたいのだ。 「悪い女よね」 彼女はまた笑う。 ああ、何故笑う? 何故泣き顔を隠す? ・・・隠さなくて、いいよ。 「別に、誰も悪くは無いだろ」 「・・・そうかな」 「そうだよ。お前は犬夜叉が欲しかった。だから行動に移した。ただそれだけだ」 「・・・そうかな」 ・・・ そうだよ。 そうじゃなきゃ。 寂しくて悲しくて。 私は生きてゆけない。 「もし・・・、その犬夜叉の彼女が私だったらどうする?」 唐突な質問。 これは賭け。お前の本気と、私の本気。どちらが強い? 「・・・・・・・・・えー・・・」 勘の良い娘だ。どこまで気付いたのだろう。しかし、彼女はまたいつもの笑顔で。 「わっかんない!」 確かに、そう言ったのだ。 「・・・そうか」 朝早く。従妹は帰ると言う。勝手に来て、勝手に帰る。勝手な従妹・・・。でも、そ こが可愛らしい。 「平気か。やはり駅まで・・・」 「平気よ、平気。もう始発で出てる頃だし・・・。ゴメンネ、色々と・・・」 彼女は何が言いたかったのか。彼女の発した【色々】の意味は何だったのか。 私は知らない。 ぴたりと止まって、彼女が最後に残した言葉は――――――――――――。 「誰も悪くないよね」 「―――――――――っ・・・!」 驚く私をちらと見ながら、かごめは少し微笑んだ。 「桔梗でもそう驚くのね。初めて桔梗のそんな顔見たっ!」 「・・・・・・・かごめ」 「じゃーねっ!」 (・・・気付いてた?) 彼女が帰って、無性に人の声が聞きたくなった。 普段はあまり使わない携帯電話を取り出して、すでに暗記してしまった番号達を押し ていく。 無機質な電話音に耳を傾け、胸の鼓動が早くなる。 (はやくはやくはやくはやく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) でも、片方では『出ないで』と想う自分がいるのも確か。 (―――――こんな時間だし、起きているわけないか) ガチャリ・・・。 遠くで、受話器をとる音が響いた。 「・・・・・・・・桔梗かよ」 「・・・・悪い、・・・寝てたのか?」 不機嫌な声が続く。 「今何時だと思ってやがんだ。普通の人間は寝てるだろ!」 (・・・―――でも、わかってくれた。) 確か、あいつの家の電話は、かかってきた相手の電話番号が表示されるんだった。 滅 多に使わない私の携帯番号を覚えていてくれた・・・―――そう、自惚れていいの か。 「桔梗?」 沈黙を続ける私に、優しく声をかけてくれた。 ああ、愛おしい。狂いそうだ。猛烈に匂う甘い香り。 「・・・・何かあったのかよ」 「・・・・・・・・ん、悪いな」 「イヤ、別に・・・悪くねぇけどよ」 【悪くない】・・・・・・・・・? 「犬夜叉・・・」 「ああ?」 「誰も・・・」 「犬夜叉。誰も・・・悪くは・・・ないよな?」 ・・・・・・・その答えを聞いたのは、誰一人でない。私のみ。 現代版犬夜叉(犬桔)・・・。 かごめちゃんを混ぜてみました。ド、ドロドロ?(オイ)私は結構好きなんです。 (イヤ、そういうドロドロ系が、じゃなくて・・・)なんでしょう。 桔梗とかごめの友情とか、桔梗のかごめに対する愛情とか・・・。 (確かに憎しみの気持ちもありそ うだけど) この設定では、皆には犬夜叉と桔梗の関係が秘密にしてあります。 秘密の関係。また また私の好きなパターンですな。(汗笑) 管理人より。 お疲れ様ですアサ美さん。そしてUPがものすごく遅くなってほんとうにすみません 実はかなりパソの調子が悪くて1ヶ月以上編集が出来ませんでした (特に最近の一週間は繋がらなかった) しかしすごいですね〜^^;実は私の好み把握してたりします?(笑) シリアス〜vvvかなり大好きです、ハイ; 絶妙な台詞のカラミが・・・かなり素敵です。 携帯の複線もばっちりです☆ 私も頑張らねばっ高校の勉強ごときに負けてられません!! 甘々も読んでみたいですね(待て。 ではでは本当にありがとうございました! |
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