Catch

イヨ



          
          
          「陛下、今日はお暇ですか?」
          
          「えっ?」
          
          いつも通りの、朝。
          「『陛下』なんて呼ぶなよ」ということも忘れて
          一瞬、彼の言った言葉の意味が理解できなかった
          
          「どうしたんだよ、急に?」
          
          そういえば、いつも職務に追われている
          彼にしては、珍しくのんびりしているな、と思ってい た ら。
          そんなおれの心配をよそに、彼は尚も続ける。
          
          「今日は、休暇なんですよ。
          よろしければ、久しぶりにお忍びで城下に出てみませ ん か?」
          
          「うん、行く行く!」
          
          ここのところ、ギュンターと2人で
          ずっと勉強続きでくたびれていたところなのだ
          この誘いは、はっきり言って、ものすごくありがたい
          
          「それでは、支度を終えたら言ってください。」
          
          そう言って、部屋の扉が閉まる
          
          ・・・久しぶり、か。
          そういえば、彼と2人きりというのも
          久しぶりのような気がする
          
          それも、2人で出かけるなんて―――
          何だか少し、デートのような・・・って、何考えてる ん だ、おれは。
          とりあえず手早く支度を整えて、彼の待つ場所へと向 かっ た
          
          「陛下。そろそろ行きますか?」
          
          「ああ、行こう」
          
          
          
          いつもの待ち合わせ場所。
          そこから、歩き出す。
          
          
          
          「そういえば、今日は何処行くんだよ?」
          
          「特には考えていなかったのですが・・・
          ユーリの気分転換くらいにはなるかな、と思って。
          行きたい場所があったら、言ってもいいですよ」
          
          「んー・・・じゃ、コンラッドが知ってる場所に案内 して よ。
          おれ、こっちのことは未だあんまりわかってないしさ 。」
          
          「そうですね・・・。まぁ、たまにはゆっくり行きま しょ うか。」
          
          「うん!」
          
          それから、おれ達はいろんな場所を回った。
          何やら怪しげな店とか、飲食店とか。
          周りには親しげな男女の姿も多く見えて
          恋人同士なのかなー、なんて勝手なことを想像したり もし た。
          
          おれ達のことは、周りからはどう見えてるのかなー・ ・・
          ・・・っと、いかんいかん、またトリップしてしまっ た・ ・・。
          
          「陛下?」
          
          「何でもないって、ほら、行こうぜ。」
          
          「・・・はい。」
          
          
          
          足も少し疲れてきた頃
          
          「それじゃ、次でラストにしましょうか」
          
          そう言う、彼の瞳に
          一瞬、何か複雑なものが見えたのは
          おれの気のせいだろうか?
          
          そう言って、連れて来られたのは
          血盟城の近くの草原だった
          
          「わぁー・・・すっげぇ、ひろー・・・」
          
          「そうですか?お気に召されたのでしたら、良いんで すけ ど。」
          
          天然の芝生
          何処までも続きそうな
          何もなくて、ただ広い、世界
          
          ・・・こんな場所、今まで知らなかったな・・・
          
          「でも、何でココ最後にしたんだ?」
          
          聞かれるというのはわかっていたらしく、
          ちょっと苦笑しながらも、彼はこともなげに言った
          
          「・・・ジュリアと、初めて来た場所なんですよ」
          
          「―――・・・・・・っ」
          
          何も言わないおれを、黙って見つめる
          その瞳が、今はいつもよりも少しだけ、痛く思える
          ・・・何で、いきなりそんなことを言い出すのか
          
          「・・・意地悪だと、思います?
          おれのこと、嫌な奴だって思いますか?」
          
          「・・・思わない。」
          
          何で、と。
          思いはするけど、やっぱり。
          嫌いになれるわけなんて、なくて。
          
          「すみません。」
          
          「・・・・・・。」
          
          「・・・すみません、陛下。」
          
          「・・・何で、あんたが謝るんだよ?」
          
          
          
          「陛下のことが、好きだから。」
          
          
          
          「・・・っ、何言ってんだよ!?」
          
          いきなり言われても、わけがわからない
          だって、コンラッドが好きなのは、スザナ・ジュリア で
          おれなんてこと、あるわけない。
          
          「冗談にしては、タチ悪いんじゃねーの?
          ・・・どうしたんだよ、急に。」
          
          「ジュリアが。」
          
          「・・・・・・。」
          
          「ジュリアが死んだ後、もう二度と、ここへは来ない つも りでした。
          でも・・・思ってはいたんです。自分にとって、彼女 より も大事な存在ができたら
          今度はきっと、その人を連れて、ここに来ようって。 」
          
          ・・・そんな、こと・・・
          
          「・・・卑怯ですね、おれは。
          そんな理屈で、貴方にわかってもらおうとしてる」
          
          「違う。」
          
          
          
          「違うだろ。あんたは、そんな人じゃないよ。」
          
          
          
          たとえ。
          彼女がいなくても
          彼はきっと、おれをここへ連れて来てくれた。
          
          一方的にそう思っているだけで
          それは単なる、自分の希望にしか過ぎないだろう。で も。
          
          「あんたのことは、ずっと見てきたんだから。
          そんな人じゃないってことくらい、わかるよ!!」
          
          「・・・陛下、」
          
          「少なくとも、おれはそう思ってる!
          ・・・それじゃ、駄目なのかよ!?」
          
          過去に何かあったのだとしても、構わない。
          自分は、彼のことが好きなのだ。それだけは、きっと 。
          ―――何があろうと、変わらない。
          
          「・・・陛下。」
          
          「・・・おれは、」
          
          「・・・陛下、」
          
          
          おれは、いつから。こんなにも。
          
          
          「・・・愛してます」
          
          
          「おれも・・・あんたが好きだよ」
          
          
          あんなに男同士だなんだって言ってきたけど
          好きになってしまえば、それまで。
          
          
          
          
          
          
          
          
          
          
          
          
          
          きっと一生、自分は目の前の青年に捕まえられる。
          
          
          
          
          
          
          
          
          
          

          
          
          
          
          
          
          
          
          あとがき
          
          淡海 築さんより14400HITのコンユーでした
          
          ・・・コンユーでした・・・はずなのに・・・
          あれぇ?激甘にする予定が、狂ってしまいました
          ・・・ウェラー、もっと良い人にする予定だったのに ・・ ・
          
          ・・・ウェラー卿コンラートさん
          彼は、私の中でマ王では不動の1位の方のはずなのに・ ・ ・っ!
          何がどうして、こんな風になってしまったのでしょう か
          砂糖と塩間違えたときも、このくらいショックなので しょ うか・・・
          
          すみません、築さん
          こんなものでよろしければ、どうぞ貰ってやってくだ さい (ぺこり。)
          
          


☆管理人からのコメント☆
うはー!有難うございますイヨちゃん!萌え!萌え!(煩)
ジュリアを基盤として絡めた切ないコンユは私の理想そのものです
ていうか・・・十分甘いYO!(ハイテンション)
美味しく頂きました〜vごちそうさまでした