放課後










「鈴鹿〜? 鈴鹿ってば・・・っ 寝てるの?」



二人きりの教室で、の声だけが妙に間延びして響く。

控えめに肩の辺りに手を添えて、ゆさゆさと揺らしてみるが、

しばらく反応が返ってこない。



「まったく・・・今日、日直なのに・・・」



わざと大げさにため息をつき、肩をすくめるポーズをとってから

隣の席に腰掛け、背もたれによりかかって宙を見る。





「わたしばっかり意識して・・・馬鹿みたい・・・・」

ふと小さくつぶやくような声が呼吸とともに漏れる。

その息遣いに応えるかのように、ぴくりと一瞬顔をしかめて寝返りを打つ



「う・・・・ん」

「あ。ごめん、起こしちゃった?」

言葉とは裏腹にあまり悪びれていないようなおどけた表情を向ける。

張り付いた笑顔が妙に切なかった。

それでも上手く笑ったつもりで。



「いや・・・別に。」



ふい、と自然に視線をそらし、無造作に髪をかきあげる。



いつからだろう。

そのしぐさに、その声に、こんなにも目を奪われるようになったのは。







「あれ・・・?なんで誰もいないんだ・・・?」

少し目が覚めたのか、きょろきょろと教室の中を見回して、

二人きりな事に気づくと、間の抜けた声を上げる。

まだ半分寝ぼけてるみたいな。

あどけない横顔に思わずふっと軽く笑みを返して見つめる。

子供みたいだね。





「今日、私たち二人だけ日直でしょ。」

わざとあきれたような物言いをしてから

条件反射的に顔を背ける。

なぜっての言葉を待つように上目遣いでじっと見つめてくる

その視線がなんだかくすぐったくて。

いつでもまっすぐに、ものを見るんだね。

ずっと前に、帰り道でそう言ったら

幼稚園の先生が人の目を見て話せって言ったから って。

妙なところで真面目なんだから。

わかってる。

勉強が苦手なのだって、きっと部活に真面目すぎるせい。

その一生懸命さも、好きなことだから打ち込めるんだね。

なんて、少し、バスケットボールにやきもちを焼いてみたりして。

そこまで打ち込めるものがある、貴方にも。

好きなことで輝けるのは、素敵だから。





「あ、そっか わりい」

決まり悪そうに人差し指でほおをかいて

申し訳なさそうな情けない顔を向ける。

珠美ちゃんが見たらびっくりするわよ、そんな表情。

でもそんなところも、なんだか犬みたいで可愛くて

今度はこらえきれなくなって思わずくすくす小さく声を出して笑っちゃった。

そしたら案の定、じと目でこっちを見て、

「何笑ってるんだよ」

いぶかしげに反論しながら、

本当にわからないって不思議そうに見て

でも笑われていることに対しては不可解だけどちょっと恥ずかしくて、

少しだけ嬉しい、みたいな。









「ほらっ さっさと日誌かいちゃお」

「お・おう・・・」

まだ納得してないような非難の目を向けてたけれど、

私の言葉に流されちゃってる。



そういう私も さっさと とか言っておきながら

ばれないようにゆっくりとペンを走らせる。



さあ・・・シャーペンの持ち方変」

「えっ?うそ。どうやって持つの?」



のシャーペンの先に意識を向けていた鈴鹿が

不意にぼーっとした顔で声をかけてくる

視線の先は動かさずに、少しだけ楽しそうに。

でもまだちょっと、眠いかな?



「え、こうだろ?貸してみ」

「ええ?」



何のためらいもなく、の手をとって

シャーペンと一緒に包み込むようにして

器用に外側から指先で持ち方の形をなおす



鼓動が早まるのを隠すように、

向かい合って自分の手を見つめる鈴鹿の顔を見ないように、

は日誌に目を落とした



するとそれに気づいた鈴鹿は、



「ほら、こーすると、もっと上手く書けるだろ」





の手ごとシャーペンを正しい持ち方でつかんだまま、

鈴鹿は日誌を自分の方に向けてさらさらと字を書いていく







は何気なくペンの先を見つめていた。

ほかに目のやり場なんてなかった。







鈴鹿はそのまま日誌を書き終え、最後に担任のコメント欄に小さく一言走り書きした。

のほうからは、鈴鹿の大きなてに隠れてなんと書いたかまでは見えなかったけれど。







「・・・読んだら、消しとけよ」

鈴鹿は日誌を閉じると、なぜか照れくさそうに空いている方の手で日誌を手渡し、

そっと手を離して、さっさと教室から出て行ってしまった。







はやっと大きくて暖かい手から開放されて、しばらく放心したまま脱力していた。



上昇する体温。

鈴鹿は子供体温で、平熱が高い。

珠美から自慢げに聞いたことがある。

・・・・本当だったんだ・・・・



いまさらそんなことを思い出しながら、

ふーっと深く息をついて鼓動を整える







「私も帰らなきゃ・・・」

日誌を拾い上げると手早く教室を出て、鍵を閉める。

不可解な行動の多かった今日の鈴鹿のことを思い出すと同時に

日誌にかかれたことが気になり始める



「あ、そういえば・・・なんて書いてあるんだろう」

先生に出す前に消さなきゃいけないのかな、なんて悠長なことを考えながら

さっきまでのどきどきがまだ残っている興奮した思考で、

どこかわくわくしながら日誌を開いた。







「・・・・・・え・・・・・・」







さっきのシャーペンは宝物にしよう。



初めての共同作業は、ケーキへの入刀じゃなくて















                        ―好きだ―















日誌の端に紡いだ ちょっと不器用な三文字














あとがき

600HITあおのちゃんリクの鈴鹿ドリームでした☆
駄文極まりないですね。申し訳ない・・・(汗)
初ドリーム小説。ぶっちゃけスクリプトすら上手く扱えていませんが(泣)
・・・精進します。
ではでは、あおのちゃん、こんなものでよろしければお持ち帰り下さいm(__)m
リクありがとうございましたvv