足元には 踏まれたばかりだと思われるたんぽぽが首をもたげていた。 そっと包み込むように触れていた手が離れ、 そのやさしさが 足元に落ちる 「かわいそう、だな」 やり場のない思いを、おざなりな言葉に込める そんな小さな花のために 手が離れてしまったことを、残念だなんて思っている自分に 人間の狭量さを感じて いらだちながら 「・・・ううん」 気のない肯定の返事を期待していた葉月の困惑をよそに、 の静かな否定の言葉が、どこか深みのある落ち着いた声で返ってきた 「この花は、大丈夫。 強いから」 淡々と、目線を下ろしたまま続ける 「・・・かわいそうなのは、踏んでしまった人間の方よ・・・」 その口調は冷たく、同情すら感じない。 それでも、そのそっけない響きの裏に 不思議な寂しさを感じた葉月は、目を見開いてに視線を奪われた。 そっと葉月手が伸び、その強い花をの手ごと包み込む。 は一瞬反射的にびくっと震えたが、 何も言わずに優しく微笑みを返した 少しだけ、不思議そうに 「・・・・どういう、意味だ?」 言葉の奥の方にある真意を察することができない自分に ちょっとした、うしろめたさを感じながら 葉月は遠慮がちにを見つめながらたずねた。 「何が?」 きょとんとした顔で 自分の発言の重さにも気づかないほど 鈍感だけど罪なくらい純粋な 「・・・・さっきの」 はっきりと応える事ができない卑怯な自分に 憤りを感じつつも 葉月は視線を逸らす。 だが、それで通じたかのように、 はにっこりと笑って顔を上げる 「ああ、さっきの、人間の方がかわいそうって言ったこと?」 「ああ・・・」 ほっとしたかのように、 それでも思いつめたような、葉月特有の硬い表情で遠くを見たまま、うなづく。 「うーん。あんまり、深い意味はないんだけどね」 へへ、と照れくさそうに笑いながらは言葉を次ぐ。 「ただ、こんなきれいな花に気づかないで踏み潰しちゃうのももったいないし もし、仮に故意に踏んづけたとしても、その人には何の得にもならない。 だってそれでたとえば、むしゃくしゃした気持ちが晴れることは無いと思うし、 むなしい気持ちにとらわれるだけでしょう? たとえこんな小さな花だって、ちゃんと痛いんだから それって、『生きてる』ってことだよね その痛みに気づけないくらい余裕がないひとは、かわいそうだなあって」 ただ、それだけなの、変だよね、 と、の小さく動く唇の形が告げた。 照れくさそうに笑いながら、 たんぽぽの花の柱頭をなでる。 それを見ながら、 答えが聞けてすっきりしたような達成感と あとに残る罪悪感が 葉月を支配する。 自分も、かわいそうな人間だろうか? 普段は感じないような疑問や不安が のそばにいるだけでこんなに発見できる それでも、どこか胸の奥が痛くて、 甘く、切ない この痛みも、 『生きている』 という証だろうか 「たんぽぽって、みたいだ・・・」 ふ、と 思わず困ったような笑みをこぼしながら 葉月は我を忘れたようにささやいた どんなところが? と、は嬉しそうにしつこく聞きたがったけれど、 あえてそれを無視して、 葉月は赤く染まった頬を隠すのに必死だった 口が裂けても言えるわけない そう、ちょうどこんな晴れた日に 太陽を浴びて輝いている そんなところが。 後書き ついに書いてしまいました・・・念願の葉月ドリームです;; 青くて甘くてすみません>< こんなの私の王子じゃないわ!という葉月ファンの方々、本当にごめんなさい; 書いてみた感想・・・難しいですね^^; とりあえず全キャラ制覇を目標に頑張りたいと思います。 ・・・でも、葉月は連載も用意してたりして(笑) |
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