背徳クライム

アスラン・ザラ ドリーム







今はただ 虚無の言葉を君に還すだけ



決してそれは 偽りではないけれど












誤魔化して生きてきた自分には綺麗過ぎたんだ、と
おぼろげに揺れる芯の強そうな紅を思い出す

たったそれだけのことが何よりも胸に痛かった。

頬にピリッと走る鈍い痛みに顔をしかめる
まるでそこには何もなかったかのような、青い空の下
新緑の丘に立つ こぢんまりとした赤い屋根を仰いだ

白い壁は触れるのをためらうほどに真新しく
暫くぼんやりと眺めてから、引き込まれるように扉をノックした



ひとつ、ふたつの光を数えて

昼だというのにカーテンを閉め切っている薄暗い部屋の中、
貴重な睡眠時間を貪るように隅のベッドで丸まっている背中に目を凝らした

チリチリと、胸の奥でくすぶる熱が体温を上げる

あの布団の感触に、肌で覚えがあるからだろうか

そんなことを考えて、らしくないなと一人で笑った

やれやれ、と肩をすくめて今日何度目かのため息をつく


「とりあえず、掃除・・・か?」


くしゃり、と指の隙間に零れる髪をまた救い上げるように撫で上げる

不必要な物の多い部屋の中、いつまでも立ち往生しているわけにもいかず
かといって他人の家にノックはしたものの無断で入っておいて
さらに無断で物の位置を変えるわけにもいかない。


しかたないな。


呆れとも諦めともつかない表情で、ベッドの上のこの家の主に目を向けた


「・・・。起きてくれないか?」


「んー・・・アス、ラン・・・?」


声に反応してゆっくりと頭をもたげて答えるが
まだかなり寝ぼけたまま、ぐずるように眉を寄せた


コドモみたいだな、とのんきに構えて少し大胆になる
近づいて手を伸ばし、ゆさゆさと定期的に小突きながら揺り動かすと
案の定、重い瞼を擦りながらようやくつまらなそうに目を開けた


「いい加減に起きろ、


「やだー・・・まだ寝るー・・・」


「掃除ができないじゃないか」


「いいよ、やらなくてー・・・アスランも、一緒に寝よー・・・」


一向に起き上がる気配のない相手に、困ったように視線を泳がせるが
それにはまったく構わずに、甘えるように手を取って擦り寄ってくる様子が
そこらの犬や猫のようで少しだけ可愛く思えた
直後に激しい自己嫌悪。
そんなことを考えている場合じゃないのに。


「そんなこと言わずに。たまの休暇をどうしてくれるんだ?」


「知らないよぉ・・・・」


わざと怒ったように険しい顔をして見せ
眠そうな顔を覗き込み、キッと睨むが
効果は薄かった
またとろけそうな瞳を糸のように細める


「・・・・・勝手に掃除するぞ?」


「だからいいってぇー・・・アスラン、主婦みたい・・・」


が女の子としての自覚がなさ過ぎるんだ」


「そんなんなくても生きていけるよー・・・」


アタマには眠ることしかないのか。
本能にどこまでも正直な思考がうらやましくさえ思う。

同時に、何の前触れもなく体が傾いだ。


「うわ・・・っ?」


「アスランも寝よー・・・」


「ちょ・・・ッ・・・?」


この体勢は非常にまずいと思うのだが。

腕を引かれてつんのめるようにベッドに左の頬を預け
半ば添い寝のような姿勢で起き上がろうと抵抗してみる

こんなとき、コドモの握力は半端じゃなく強いもので
二の腕をしっかりと掴まれたまま動けない。


しかたないな、と二度目の苦笑。







「・・・・まちがっても、他の男にこんなことするんじゃないぞ?」


「しないよぉ・・・アスランだけ、だも・・・・」





耳元に落ちる安らかな寝息にくすぐったそうに耳を細めながら




なにもかんがえられない 最大の罪に身をゆだねる



本能という名の悪魔の囁きに いつまで耐えられるのだろうか

















☆あとがき☆
5のお題ラスト。SEED夢です。短くてすみません。
久々に書きました・・・最近小説が書けない自称文字書きのオウミノです。
アスランがこの後黒ザラ降臨してイタダキマスするかはご想像にお任せします
因みに私はしないに一票。だってヘタレだから(笑)