なんにも言わずに抱きしめた かすかに震える体と引き結んだ唇は無視して 伝わる熱を感じていた 外からはまだしばらくやみそうもない雨音が遠く響いていて 二人は言葉を失ったかのように息を呑んで立ち尽くした 「・・・いつまでこうしているんだね、鋼の?」 「・・・もうちょっと」 回した腕に力を込めるとあきれたように苦笑して おそるおそるといった感じに背中をぽん、と叩かれる 「まるでだだっこだな」 「うるさい」 痛いところを、つかれた きっと自分なんて本当にまだ子供で 聞き分けの無い、無知な存在 そして子供ゆえの残酷さで ときに大切な人を 言葉にも無いことで傷つける やれやれ、とあきらめたような小さなため息が耳元に降ってくる 「鋼・・・エド」 聞きなれない呼び名にくすぐったいような複雑な感情を覚える あくまで冷静に状況を図っているような相手に 焦りさえ感じながら 「・・・なんだよ」 ぶっきらぼうに答えて、しばらくそのまま動かない 大人ゆえの余裕さの中にも甘えが見えて ひどくもの哀しくなる 所詮自分はその程度なんだと思い知らされる 「いや・・・このままだと仕事に差し支えるのだがね?」 「どーせ放したって仕事しねえだろ、あんた。 今日は調子悪いしな?無能大佐」 「人聞きの悪い」 しばしマンネリ化したやりとりが続いた後に それ以上言い返せなくなったのか、のどを鳴らして口をつぐんだ コホン、とわざとらしく咳払いをして はーっと大げさに乾いた唇から息を漏らして目線を下ろす 背中に回した腕を力なく下ろし 顔を遠ざけて俺の出方を伺うかのようにそわそわと見やってくる 「・・・好きにしたまえよ」 「最初っからそのつもり」 にっと口元を吊り上げて笑みを作ると 君のその顔が苦手だよ、などと 額を手袋をはめた手の指先で押さえながら零す その指先に、そっと自らの固く冷たいつめを絡ませる 人工的すぎて、何も感じることなんてない 今触れている手のぬくもりさえも拾うことが許されない それでも 自分は幸せ者だ、と心から思う そう告げたとき どうして?と怪訝な顔で問われたけれど、構わず続けた 「大佐ぁ、苦手なモンがあるのも悪くないぜ?」 突然の話題変換にわけが解らないというようにしばらくきょとんとしていたが ははっと余裕ぶって鼻を鳴らし、なぜだい?と流れを促した 言葉尻を捕らえるのはやめたまえよ、と悔しそうに付け加えて 「だってさ、怖いもん無しになっちまうのって・・・」 なんか 人間らしくない、と かたかたと小刻みに揺れる痛みを感じることのない腕を抱くように 胸元に押し当てた 自分にも思い当たるふしがあるのか さびしそうなはりついた微笑をうかべて じっとこちらを見ながら聞き入っていた ふと、思い出したかのように ぐい、と腕の中へ押しやられた ぱすっとシャツにしわがよる感覚がして 耳元にどちらのものとも解らない心臓の音がトクトクとじかに響いてきた 「な・・・んだよ、大佐」 「いいから、」 黙っていなさい、と 穏やかな口調で制され いつもよりやや低めのトーンにどきりとしながら 震えるような衝動をおさえてぬくもりを求めるようにすりよった ここぞとばかりに思い切り甘えていたけれど 顔を上げると大佐ののどが震えているのが見えた 長い抱擁のあと、そっと体を放しながら 思い出したようにささやいた 「・・・何か勘違いをしているな、鋼の」 不思議に思って顔を覗き込むと困ったように噴出した 「君も、私が苦手なんじゃないか」 コトリ、と胸の奥で何かが動いた 雨のふる音だけがやけに耳に聴こえた あとがき 藤生様リクエストエドロイでした! お待たせしてすいません;状況設定など無かったので勝手に書かせて頂きました 頑張って書いたので、よかったらお持ち帰り下さい! 一応、エドとロイはまだ付き合ってない設定です。(本当に勝手) |
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