それは 一種の中毒症状。 キィ、と乾いた音を立ててドアを開け、重苦しい空気を蹴破る 「うわ、あいかわらず汚ぇ」 「第一声がそれとは、相変わらず失敬だね、鋼の。」 その家の主は椅子に座ったまま背を逸らせてドアの方を振り返り、 入ってきた相手を確認しながら不機嫌そうに低く言葉を返す。 それでも瞳は緩やかに弧を描いていて 無遠慮に踏み込むことを許されたのだと解した。 そうした相手に柔らかく笑みを返しながら お茶でもいれようと立ち上がったところを金属仕様の片手で制して ちらりと、散乱した机の上の書類を横目で見やる。 「あー・・・ごめん、仕事してた?」 それを見て決まり悪そうにこり、と人差し指で頬をかきながら んー・・・と右斜め上の方へ視線を投げ、 あることに気が付いた 「たーいさ、それなーに?」 おもちゃを見つけた子供、 水を得た魚、とはまさにこのことで。 無邪気ににやりと笑いながら、目標物に手を伸ばす。 それを聞き、しまった、と焦って踵を返すがもう遅い。 すでに目標物は少年の手の中にあり、 悪戯っぽく口の端をつりあげながら 葉書大の木製の額縁をまじまじと覗き込んでいた。 「・・・・ふーん」 含みの有る笑みを浮かべながら持ち主を見やると、 すでにふいっとそっぽを向いていた。 艶の有る切りそろえたさらさらの黒髪の合間から、 いつものきめ細かい白い肌とは対照的な 赤く染まった控えめな耳たぶが覗いていた それを見て。 ほんとにほんとに嬉しくなって。 確かめるように生身の親指の腹を頬へ添えた。 ぐいっと腕を返すと、その長身は簡単に腕の中へ収まった ぽすん、というクッションになったコートから白いほこりが舞って あ。と小さく声を上げたけれどそれはあえて無視して そのまま首筋に指を這わせて、あごを上向かせる 「大佐、顔赤いよ」 「見ないでくれ」 観念したかのように脱力しているのに、 まだその瞳は悪あがきのように鋭い光を帯びていた それでもそのひとつひとつのしぐさが ひどく いとしく おもえて たまらなくなって抱きしめると抗議の代わりのようにくぐもった声が発せられる それさえもせつなくて 「かわい♪」 「・・・・やめたまえ、鋼の」 もう約束されたやりとりを、何度となく繰り返した されるがままになっていた大佐が、ふと顔を上げる それに気が付いたのか、真剣な面持ちをして目線を合わせた 「・・・・で、何をしに来たんだね、君は」 「ご挨拶だな〜、大佐が呼んだくせに」 解ってはいたけれどむーっと頬を膨らませて怒っているふりをしてみせる 一歩後ろへ下がった大佐を逃がすまいと腕をしっかりと制する その様子に驚いた表情をしていたけれど、こらえきれずに小さく噴出した 「・・・いや、そうだったね、失敬」 手で口を覆い、声を殺してくくく、と笑っている その横顔が、いっそう幼く見えて つい余計なことまで言ってしまう 「・・・童顔」 「・・・・失敬な」 こほん、とちいさく咳払いをし あからさまにむっとした不機嫌そうな表情を作る 「で、大佐が俺をここに呼んだ用は何なんだよ?」 「・・・・え〜・・・」 その隙を突くようにわざと話題を変える 死角だったかのように言葉を濁された 「・・・そんなカオされたらますます聞きたいんだけど?」 「・・・」 「それとも、これ、貰って行って良いの?」 なかなか口を割らない大佐に、にやりと笑みを作って さっき奪った額を鋼の人差し指と中指の間にはさんでひらひらと振ってみせる むきになって取り返そうと手を伸ばしたけれど、逆にもう片方の手で腕ごと包み込んだ 「ほら?言えよ?たーいさ?」 「悪趣味な・・・わかっているだろう?」 「それでも、大佐の口から聞きたいの!」 悔しそうに眉を寄せて視線を泳がせている 実際気になるんだけど。 「・・・・喜ぶなよ?」 「喜ぶような内容なのかよ?」 念を押すように弱気にしぼりだす声に わざと反抗的に返答する 面倒くさそうに、まいったな・・・と小さくうなって 目を閉じて小さく深呼吸した 「・・・・本当は、特に、用なんて、ないんだ」 「は?」 「・・・久しぶりだな、鋼の」 コトリと置かれた机の上 恥ずかしそうにパタンと倒れた はにかんだ笑顔の二人 感情を押し殺して、いままで平気な振りしてきたけれど こんなにもこんなにもあいたかったんだ それはきっと もうほとんど禁断症状 あとがき 意味不明ですみません・・・・!! エドロイです。3作目です。 いつもながら短い・・・。 久々に会って、自宅に呼んだという設定でお願いします ちなみに、額に入れて大佐が飾っていたのは、写真です。エドとのツーショット。 アルカロイドは、アルカリのようなもので植物性の毒(?)です 麻薬みたいなもんかな?と思い、中毒ってところとかけました |
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