20.「罪と罰」







こころ縛るもの     それは痛いもの?















胸の奥にずしりと重く響いてくる

ああどうしてこんなときに 大切な人の泣き顔を思い出してしまうのか

耳の空気に触れている部分がひりひりするくらいつめたい
もっとも、自分の耳なんて  人間のそれとは違うのだけれど。
もともと高い体温が、今日はやけにだるく感じる




あいつ、いまごろなにやってんのかな〜・・・

ふと寒空を見上げて思う

腰掛けた井戸の淵

足元が妙に気になる

そんな資格すらないくせに


そうしてきっといつもどおりの笑顔を期待して
乾いた土を裸足で蹴りこむ

ざっざっと砂埃の舞う音がして
視線をすべらせ緋色の衣を翻す






「・・・なにやってんだい犬夜叉、こんなところで」
「っうわぁ?!・・・・なんだ珊瑚か・・・・」


不意をつれたように背後から声を駆けられ
一瞬動揺した自らの鼓動を確認するように胸元に手をやりながら
少し前かがみできょとんとしている相手を見とめてはーっと盛大にため息をついた

その様子にむっとして

「なんだい、あたしで悪かったね」
「い、いや、そういうつもりじゃねーけど・・・」

気まずい空気が両者間に流れ、お互いに目を逸らす
むしろ嬉しいと言外に告げて
険しくまぶたを半分伏せると長いまつげの影が頬に落ちる





「・・・・かごめちゃんのこと、考えてたの?」

どうしてこうも鋭いのだろう

「あたりだね」

それとも自分がわかりやすいのだろうか
などと考えながらも上手い否定の言葉を捜す

「ごまかさなくていいってば」
「ごまかしてねえよ!」
「ほら、すぐムキになるんだから。わかって当然」



反論の理由が見つからず、それでも素直に認める気にもなれず

こり、と決まり悪そうに頬をかくと くす、と微笑が返ってきた


それにしばしの暗黙の了解を読み取って

二人草原の井戸端で、穏やかな風に吹かれていた










「会いに行ったら?犬夜叉」


突然の核心をついた発言に目を丸くしながらばっと身を返す

全身で驚きの表情をつくる自分にまた小さく苦笑しながら
それでも最後に肩をすくめてうなづくように顎をひく


「会いに行ってきなよ」
「!でも・・・」



行動に複雑な感情がまとわりつく

言葉に絡みつかれて動けない





確かにやきもちを妬かれて束縛されるのは好きじゃない
しかしこうも気持ちよく背中を押されるのもかえって不安になる




「あたしは大丈夫だからさ」




その言葉に 甘えていいのだろうか


穏やかだった風が、急に強くなった気がして
向かい風に目を細めた
となりを見ると同じように目を細めながら手の甲で庇を作っていて
手を伸ばして抱き寄せ、衣の袖先で覆うようにして身をかばった






「あんたはさ、どうせまたつまんないこと考えてるんだろうけど」

「・・・るせ・・・・」






抱きしめられたまま、表情を変えずに言いながら
おずおずと背中に回る手の平の暖かさを感じる



その指先に力を込めて、真ん中で分けた切りそろえられた前髪をすくように
傷つけてしまわないように柔らかく、なでおろす   



「すぐ帰ってくる」
「気をつかわなくていいよ」


身体を離すとそのぬくもりに名残惜しそうに微笑して
かごめちゃんによろしく、と舌先で告げるのを見て涙が出そうになった









結局甘えてしまった自分に嫌気がさした





























たとえばそう、それはオールトの雲のような

夜空にこぼれた不確かな想い






















「もう!なんで来てるのよ!」

「いいじゃねーか、もう三日も帰ってこねーし。さっさと行くぞ!」








冬の冷雨に寒椿の映える境内で
ふと空を見上げていてもたってもいられずに
鉛筆を置いて飛び出した








きっと会いたかったのは自分の方で






それでもまさか本当に来ているとは思ってもみなくて


シャワーのような水の格子に囚われて
古びた井戸に腰掛けた緋色の衣を見つけたときは 息が詰まりそうになった



















所詮はきっと繰り返す運命








まだきっと鎖の中で眠り続ける









































































































































あとがき
かず様リクエスト犬夜叉が現代に来る話でした!エセシリアス・・・(汗)
二股みたいになってしまいました;しかも暗いですし!すみません><;
ほんっと〜・・・・・にお待たせして申し訳有りません;テスト・予習・イベント・原稿が重なりました;
難しかったです・・・・;私の書く犬夜叉ってなんでこうヘタレなんでしょう(泣)
かず様、気持ちばかりですがよろしかったらお受け取り下さい;;