12.「orange juice」






カラン、と乾いた鈴の音が空を切る

人ごみの中、子供特有の視界の狭さで流されそうになりながらも

何とか必死にあがいてみせる

「灰原さん!大丈夫ですか?ほらっ。はぐれないで下さいね」

他意無く差し出される 小さな手

おずおずと握り返した

こんな日常があってもいいかな



































「はーっ すげー人だな」

「バーロ、元太が一番いい場所で花火を見たいとか言い出すからだろ?」




なんとか人ごみを抜け出し
ただっ広い河原のかすみに追いやられたときに
元太と呼ばれたその少年が間抜けな声で
感心したように言い出したのを
眼鏡の少年がカチューシャの少女の手をそっと放して
大人びた口調で制した




カチューシャの少女が少し残念そうに
頬を赤らめたことも見逃せない

視線に気づいたのか、
くるりとこちらを見て恥ずかしそうに笑った



「哀ちゃんも大丈夫だった?」
その様子に苦笑しながら
小さくうなづいて見せると
はにかんだ笑顔が返ってきた


「円谷君が一緒だったしね、ありがと」

「い・いえ、そんな・・・っ」

振り返ると、驚いたようにぱっと手を離し
緊張した顔で言った


「と・当然のことをしたまでですから!」



くすっと笑ってひらひらと手を振って見せる


嬉しそうに顔を上げてそのまま踵を返した

「あ〜光彦君、どうしたんだろ、耳まで真っ赤だよ」

文字通り髪の合間からは高潮した耳たぶがのぞいていて

ほほえましい光景に目を細めた




「哀ちゃん、よく笑うようになったよね」


穏やかに、告げられた

返答を躊躇した自分がそこにいた



「そ・・・そうかしら」

平静を装って言葉を濁すと思いのほか無邪気な返事

「うん!!なんか最近優しい目をしてる!」

いきいきと、自分のことのように喜んでくれる

これが友達というものなのかしらと

意識の隅で感じるのと、口元がほころびるのはほぼ同時


「・・・ありがと」
「うんっ」

えへへ、と照れくさそうに髪に手をやるしぐさ

幼いながらも今日は少しだけ背伸びして、
リボンのついた少し深い大人っぽい色合いのカチューシャを気にしながら



こんな風に笑えるようになったのは、いつからだろう どうしてだろう


言われてはっといまさらのように気づいた


「おい、オメーら、なにやってんだよ、花火、始まるぜ?」


誘われたときはしょーがねーな、と面倒そうに手を引かれていたくせに

いつのまにか子供のようにムキになっている


貴方もこうして変わったのね、とあきれたように微笑んで見せると

なんだよ、と不思議そうにたずねてきた

しらない、と返すと ふてくされたように頬をかきながら手を差し伸べた

その手の上にそっと自分の手を重ねて ひかれるままに歩いた

































満開の空の花を特等席で遊覧した帰り道

いつになくはしゃいで、五人一列に連なって歩いた

少し通行人の邪魔なんじゃないかと思ったけれど

なぜか気にならなかった
















こういうのもたまにはいいだろ、と繋いだ手から視線を受けて




そのみための年齢とよくお似合いの


オレンジジュースを口にしながらこくりとうなづいた






















































あとがき
かずさんリクエスト少年探偵団の話でした!
歩美ちゃんてつかいにくいなあと実感しました。
いえ、私、自分がひねくれてるせいか、素直な子が書けないんです;;
こんなんですみません><よろしかったらお持ち帰り下さい